土地政策と土地利用の経済分析

今後,人口減少化により都市のスマートな縮小が求められます.都市縮小時代に都市機能を維持しながら土地をいかに集約するかは極めて重要な社会問題と言えます.土地政策と都市内土地利用の関係について,1) 土地税制が都市転用に与える影響の実証分析と,2) 生物多様性オフセットの導入が都市内土地利用に与える影響の理論分析,の2つの研究を行ってきました.

第一の研究では,細密数値情報の10mメッシュデータを用いて土地転用モデル(具体的には,ハザードモデル)を推計し,過去の土地税制の変更が農地転用に与えた影響を実証的に明らかにしました.更に,土地税制が土地利用の変化を通じて生物多様性に与える影響についても推計しました.

第二の研究では,開発と自然生態系の保全の両立を目指した仕組みとして国際的にも注目されている生物多様性オフセットに着目し,生物多様性オフセットの導入が都市内土地利用と都市規模に与える影響について理論分析を行いました.生物多様性オフセット導入時に大きな問題となるのは,自然生態系を復元するための土地(代償用地)の取得費用が開発プロジェクトを過度に抑制してしまう危険性です.生物多様性オフセットを古くから導入しているドイツでは厳格な土地利用規制を敷いているため代償用地の取得費用が低いと予想されるのに対し,日本では開発規制が非常に緩く代償用地の取得費用が非常に高くなる危険性があると予想されます.土地規制の厳格さと生物多様性オフセット導入時の都市内土地利用や都市規模との関係について,都市経済モデルに基づく理論分析を行ったところ,土地利用規制の厳格さは,生物多様性オフセット導入時の都市内土地利用の効率性や都市規模に対して中立的であるという上記の予想に反する結論が理論的に導かれました.

関連論文

  • 今野悟,福本潤也:農地政策が農地転用と生物多様性に与える影響の定量的把握,地理情報システム学会講演論文集, Vol.23, 2014.
  • 福本潤也:生物多様性オフセットが都市規模と都市内土地利用に与える影響:日本とドイツの土地利用規制の違いを考慮した都市経済分析,地域学研究, Vol.45, 2015.