提案型地域政策制度の経済分析

提案型制度とは,1) それぞれの地域が独自に地域政策を策定して,国に対して提案を行い,2) 国が提案内容を審査して,実施が望ましいと判断した場合に,規制緩和や補助金などを通じて地域政策の実施を支援する制度のことを指します.提案型制度の代表例としては,構造改革特別区域制度,地域再生計画制度,都市再生特区制度などが挙げられます.

近年,地域社会が地域政策の立案や実施に主体的に取り組む必要性が主張されています.提案型制度は,そのための有力な制度的方策の一つであると考えられています.ただし,提案型制度は期待されたほどの成果を達成していないとも考えられています.本研究では,提案型制度を有効活用するため,1) 提案型制度の役割と機能について経済学の視点から分析するとともに,2) 望ましい提案型制度の設計指針を理論的に解明することを,研究の目的としています.

提案型制度は複雑な制度であるため,多様な視点から分析することが求められます.これまでに,1) ゲーム理論(game theory)を用いた提案型制度のもとでの国と自治体の相互依存関係に関する分析,2) 社会ネットワーク分析の手法を用いた提案型制度の適用実績の可視化,3) 構造改革特別区域の利用実績を用いた提案型制度の利用特性の実証分析,等に取り組んできました.

関連論文

  • 福本潤也,後藤雄太:構造改革特区制度の提案・審査・事後評価プロセスに関するゲーム分析,土木計画学研究・論文集,Vol.25,2008.
  • 福本潤也,國枝真季:提案型地域政策制度のモデル分析,地域学研究,Vol.39,2009.
  • Fukumoto. J. and Okamoto, Y.: Social Network Analysis of Japanese Social Zones System, Proceedings of 11th International Conference on Computers in Urban Planning and Urban Management, 2009.
  • 福本潤也,岡本佳洋:提案型制度の利用実績における自治体間格差の実証分析,土木計画学研究・論文集,Vol.27,2010.
  • 福本潤也:地方自治体から見た提案型制度の成果と課題―東北6県の市町村を事例として―,土木学会論文集D3,Vol.68,2012.