需要予測と事業評価の制度設計

公共事業の需要予測や事業評価に対して,事業実施を正当化するために恣意的な分析結果の算出が行われているのではないかとの批判が社会から寄せられてます.需要予測や事業評価の方法論は土木計画学(infrastructure planning)が生み出してきた最も重要な研究成果の一つであり,それらの方法論に対する社会的信頼の回復は土木計画学分野における喫緊の課題の一つとなっています.信頼回復のための方策としては,①研究開発を通じた手法の改良,②情報公開等を通じた手法の限界についての理解促進,③制度設計を通じた恣意的な分析結果算出の抑止,の大きく3つが考えられます.このうち,福本准教授は ③の方策について理論的な分析を行ってきました.本研究で得られた成果は需要予測や事業評価に対する信頼の回復に直ちにつながるものではありませんが,①や②の方策に関する関連研究と組み合わさることで,長期的には社会的に望ましい公共事業の実現に寄与する可能性を秘めています.

関連論文

  • 福本潤也:需要予測に対する信頼回復の制度設計,土木計画学研究・論文集,Vol.23,pp.23-38,2006.
  • 福本潤也:需要予測におけるマニピュレーション抑止制度の比較分析,土木計画学研究・論文集,Vol.22,pp.133-144,2005.
  • Fukumoto, J.:External Audit System ofProject Evaluation: Optimal Structure and Audit Quality, InterdisciplinaryInformation Sciences, Vol.11, pp.91-103, 2005.
  • 福本潤也・土谷和之:需要予測におけるマニピュレーション抑止の制度設計に関する研究,土木学会論文集,No.772/Ⅳ-65,pp.97-114,2004.
  • 福本潤也・土谷和之:プロジェクト評価の監査制度に関する研究,土木学会論文集,No.772/Ⅳ-65,pp.79-95,2004.
  • Fukumoto, J.:Mechanism Design of Transport DemandForecast, Journal of the Eastern AsiaSociety for Transportation Studies,Vol.5, pp.1534-1548, 2003.